横須賀の横須賀海軍施設付近に堂々と人種差別をしている英語の看板があるって本当?
ココがキニナル!
横須賀の米国海軍基地のそばにある諏訪大神社は、鳥居手前に「米軍関係者は立ち入り禁止」と英語で看板を掲げています。人種差別的な処置に思えます。過去に何かあったのですか?(にゃーさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
看板は神社側ではなく米軍側が設置。1972年に近隣で酔った米兵などが住宅地や施設などに侵入して来ないようにする注意喚起のため設置した
ライター:小方 サダオ
バーの経営者はどのように思っているのだろうか?
米兵に対する住民の非難の声は厳しいようだが、バーを構える人にとっては米兵がお客さんであり、難しい立場といえよう。
ハロウィーンの飾り付けのセンスが光る、バー・グリーンヒルのオーナー、今和彦 (こん かずひこ) さんに話を伺った。
「昔は米兵が朝まで飲むことができました。しかし問題が起こるたびに門限がどんどん短くなり、米が浜での殺人事件や汐入駅裏でのタクシー運転手殺害事件の後は、門限は平日で午前0時まで、週末は午前2時までになってしまいました。さらに2年前の沖縄での集団強姦事件では住民の反対運動が起こると、さらに門限が厳しくなりました。あの事件は一時的に滞在した米兵が起こしたもので、在日米兵にも処罰が及んだ形になり納得できませんが・・・」
ラウンジバー・グリーンヒル
広いフロアではライブイベントも行われる
「私の店も酔った米兵に鏡を壊されたことはあります。後日、本人が弁償に来ました。基地に言うと処罰されちゃいますから言いませんよ」と答えてくれた。
オーナーの今和彦さん
同店にとって米兵はお客さんなので、この件には複雑な心境なのではないかと聞くと、「うちは外国人さん相手のバーですから問題が起こると商売が難しくなってしまいます。もちろん事件を起こすことは問題ですが、特殊な『軍人という気質を持つ人たちである』ということを理解してあげても良いように思います。男としてなめられたら戦う、というのは軍人として当然といえるのではないでしょうか?」
「また縦社会の中で抑圧されているのでしょうから、酔った勢いでトラブルを起こすのも不思議なことではないのではないでしょうか? それは自衛隊員とか日本人でも一緒でしょ?」と答えてくれた。
我々の側は、彼らが「勝負において勝つ」ことを求められるプレッシャーと闘っている、特殊な気質を持つ人たちであることを念頭に置いて接するべきなのかもしれない。
ドブ板通り商店街にあるカントリー・バー・ジョージズに掲げられた米兵のスナップ写真
カントリー・バー・ジョージズの店内
続いてハッピーワールドというバーの女性オーナーのYさんに話を伺った。
バー・ハッピー・ワールド
毎週金曜日にオーナーによるベリーダンスショーが行われる
ハッピー・ワールドの店内
「米兵の事件に関しては、"(女性が殺された)米が浜"と"(汐入駅付近で起きた)タクシー"の2件が続いたのが大きかったわね。今では彼らは午前0時までしか飲めなくなってしまったの。うちの店内で問題があったとすれば、(米兵が)酔ってテーブルに乗ったらテーブルが折れたことがあったわね。一応弁償してもらったけど。あとトイレに立てこもって外出時間の門限を過ぎても出て来なかった酔っ払いがいたわ。警察が来て、暴言吐きながら引っ張られて行ったけど」
ハッピー・ワールドの店内に貼られたスナップ写真
空母で働く米兵は紳士的だという
空母ジョージ・ワシントンで働く米兵の常連客とスタッフで富士登山に行った時の様子
「だけどうちには良い子が多く来てくれるので、特に大きな問題は起こったことはないわよ。空母で働いてる常連の子たちなんだけど、おかしな米兵の客が来たら彼らが追い出してくれるの。危険なのは、鑑別所か軍隊かの選択で軍隊に入ったような、雇われ兵のような人たちかもしれないわね。入隊して2~3年くらいすると嫌になって辞めたくなるらしいわね。ほかにはけ口がないから酔って暴れるんじゃない?」
軍隊生活で悩みを抱える米兵が問題を起こしやすいのかもしれない
「あとフィリピン人の経営するバーが儲けるためにやたらと飲ませるのも危険だと思うわ。また地方から米兵を逆ナンパしに来る女たちも。そんな隙のある気持ちだとトラブルに巻き込まれて当然よ」
米兵の友達を求める日本人にはバーが良い出会いの場となるだろう
「沖縄の方は、『米軍出て行け!』という感じだけど、横須賀市民は米軍と友好的な姿勢なのよ。だからっていうわけじゃないけど、米軍の子たちは良いこともしているのよ。彼らがバス一台貸し切って、春光学園という児童養護施設子どもを預かる幼稚園を訪問してお菓子やおもちゃを配るボランティアをしているの。そして基地内でのクリスマスパティーに子どもたちを招待してあげたりして」
春光学園を訪問する米兵
記念撮影をする米軍の訪問団と子どもたち
訪問のお礼にダンスをプレゼントする子どもたち
「あと常連の米兵が、夜に大勢でどこかに向かっていたことがあったので、ついて行ったことがあるの。そしたらそこにはホームレスが並んで彼らが自腹で買った服などをあげたりしていたの。ホームレスの援助って、ホームレスを増やすことにつながるから日本人だと問題になりやすいじゃない? でも彼らには関係ないからできることなのよね。でもこんなボランティアをすると、出世のポイントを上げることになって自分の利益にもつながっているということはあるかもしれないけどね」
ホームレスの援助をする米兵のボランティア
深夜に集まるホームレスたち
「横須賀で生まれ育った私も昔は『何でいつまでも米兵が日本にいるのよ』と思っていたタイプだったけど、戦争に負けたことは事実なんだし、仕方ないんじゃない? 彼らとうまく共存してゆくしかないんじゃないかしら。そろそろ空母が入る時期だけど2隻になる予定で、商店街もにぎやかになるから楽しみにしている人も多いわよ」と答えてくれた。
並ぶホームレスたちに生活用品などを贈る
生垣の上に置かれた衣類
たしかに米兵の起こす事件のほうがスキャンダラスで、新聞としても報道したがり、米兵の良い行いについてはなかなか報じられていないかもしれない。そのために我々にも米兵の悪いイメージのほうが目につきやすいといえる。
ふと先ほどのグリーンヒルの前を通ると外国人のお客さんの姿が・・・。オーナーにお願いして、常連客のひとりに話を伺った。
オペレータールームで働いているというBEN(仮名)さんは「俺は海軍が好きだから悪い風には話をしないよ」と断ったうえで、次のように話をしてくれた。
顔を隠すため後ろを向き、通訳をしてくれた女友達には前を向かせるお茶目なBEN(仮)さん
「自分はトラブルを起こしたことはないよ。それは一部のバカな水兵がやることだよ。今では午前0時以降は飲めなくなったよ。でもMPがよくパトロールをしているので安心するのか、以前は怖がっていた日本人とも友達になりやすくなったのは良かったよ」とのこと。
なかなかのイケメンなので、日本人女性の逆ナンパについて聞いてみた。
「愛情なんかじゃないんじゃない? 結婚するとアメリカに住めるとか、グリーンカードが持てるとか、安定性がほしいだけでしょ」とのこと。
仕事に関して伺うと、「海軍での仕事は好きだよ。労働時間が長いことが嫌だけど。この仕事のおかげで日本にも来られたしね」と答えてくれた。
脇腹にある「ワンピース」のタトゥー
ついでに日本の好きな場所について聞いてみた。
「秋葉原だね。マンガやアニメの店がたくさんあるから。あと食べ物は大好きだよ。ラーメンとかカレーとか」とのこと。
MPにインタビューを試みたところ、「広報を通して」との返答
たしかに午後8時を過ぎごろから、ドブ板通り商店街ではMPの姿をよく見かける。三人一組が数組、距離をおいて巡回しているようだ。無線機を持っているので、問題が起こればすぐに基地からの応援が駆けつけるだろう。そのため酔った米兵の問題は解決されやすいかもしれない。
取材を終えて
当然米兵がトラブルを起こすことが一番の問題だが、米軍側の対応も重要となるだろう。米兵をかくまうような行動をとれば地元住民をはじめとした日本側の信頼を得ることは難しいといえる。米軍基地が米兵の逃げ場とならないように、基地の前に「OFF LIMIT」の看板をつける姿勢がほしいものだ。
しかし沖縄の基地問題でも言われるように、基地があって街の発展があることも事実といえる。ドブ板通り商店街も米兵との異文化が交差することが特色となっている。その特色には、「軍人という危険な仕事をする人たちがいる」という魅力も加味されているといえ、この危うくハードな雰囲気に惹きつけられる日本人も多いのではないだろうか。
入港する空母の数が増えるそうで、この街はにぎやかになるだろう。米兵が特殊な気質を持つ人たちであることを自覚しながら、彼らとの交流を楽しむ日本人が増えることで、独特な横須賀の魅力が続くことを期待したい。
―終わり―
狐猫さん
2014年12月18日 02時53分
このような注意看板が無くても、安全で安心できる町になれば良いですね。もちろん「私有地に付き、許可されている人以外は立ち入り禁止」みたいな内容で、英語、フランス語、日本語、中国語、韓国語、と5ヶ国語で書かれている場合は別ですが。
ポスポスさん
2014年12月11日 16時05分
何事も一部の人間の行いがすべてをそのイメージで悪い方に思わせてしまう。その典型的な例ですね。難しい問題ですが上手に共存できるといいと思います。
にゃーさん
2014年12月09日 16時45分
丁寧な取材で詳細な記事を書いてくださり感謝します。神社側の意志ではなく、米軍の判断で設置された看板だったんですね。いろんな場所にOFF LIMITSの看板があることも知りませんでした。敗戦後長く接収されていた土地の多い横須賀や横浜にはアメリカ文化が広く深く浸透しています。互いを尊重した関係を築けることを切に願います。