座学、消火訓練、警棒の取り扱い・・・内容の多さに驚愕

　
お邪魔したのは、三浦藤沢信用金庫で警備業務にあたる方々の講習。
年末特別警戒警備として年末までの勤務が決定している30名（現任11名／新任19名）の、講習の様子から出陣式まで密着させていただいた。業務や経験にもよるが、基本的には約10時間×4日間の集中的な講習が行われる。

伺ったときはすべて男性だったが、同社では年間50名ほどの女性警備員を採用。同校で講習を受けたのち、受付などの比較的ソフトな業務に就くことが多いが、その激務ゆえ3分の1が離職するという現実は、警備業務に付随する精神的・体力的な負担の大きさを物語る。

では、具体的にどのようなことを学ぶのだろう。

同センター長の及川氏。教官歴は約12年の大ベテラン

　
まず、座学の内容の濃さに驚く。
ざっと挙げるだけでも、憲法・刑法・遺失物法・警備業法・救急法・心肺蘇生法・消防法など。
　
実は同社では定年を設けていないのでその平均年齢は高め。もちろん、これは警備員として優秀な人に長く働いてもらう上で有効だが、それと同時に前職を退職後に初めて警備会社に入社する人も自然と多くなる。
　
となると、前述のように平均年齢が高いため、座学の量を短期間でこなすには相当な努力を要することが予想される。
　
次にお邪魔したのは、いかなる施設においても最重要項目に挙げられる消火訓練や警棒の使用方法、犯人識別に役立つカラーボールの使用方法の講習。
　

何をするにもまず敬礼から
　

消火栓の取り扱いについて
　

警戒棒の指導
　

今、「ドラg・・・」とか思いましたね？
　

手の平サイズのカラーボール。慣れるまでは標的に命中させるのに苦労する

　
　
　
これらのアイテムが登場する事態は望ましくないが
　
警備員の必須アイテムといえば、まずこれ。
　

そう、ヘアアイロン
　

じゃなくて、警戒棒
　

アルミ製刺叉（さすまた）は1.5kgほどだが、素人は逆に振り回されてしまう

　
警戒棒には60cmのものから90cmのものまで種類があり、警備会社は警戒棒に限らず使用する防犯用具はすべて公安委員会へ届け出ることが義務。
　
とはいえ、これらが登場する事態というのはまさに緊急事態。本来望ましくない状況だが、悲しいかな一寸先は闇。私たちの与（あずか）り知らぬところで警備の方々はあらゆる事態に対応すべく、そこにいる。
　

そして出陣式当日
　

翌日より三浦藤沢信用金庫への勤務が開始される

　
　
　　

取材を終えて

　
山の上にある謎の学校は、神奈川最大規模の警備会社である「株式会社KSP」が所有する社員用訓練施設であった。

同社では、神奈川県を中心とし金融機関・民間企業・官公庁・教育機関・商業施設・マンションなどでの警備やイベント警備などに対応できる即戦力となる警備員の養成を第一とする。

現場はどこであれただ立っているだけではない。「ただ毅然とした立ち姿を見せることだって防犯に繋がる」と語る及川センター長の言葉に、大きく頷いてしまった。
　
　
‐終わり‐