鶴見川下流で練習をしているKMC横浜ジュニアヨットクラブはどんなクラブ?
ココがキニナル!
日曜日に鶴見川の生麦の橋の下流で小型ヨットの練習をしているKMC横浜ジュニアヨットクラブってどんなクラブなのでしょうか?(Ryujinさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
オリンピック出場を目指した技術の獲得と、自律した「シーマンシップ」を育むクラブです。クリスマス会などの家庭的なイベントも行われていました。
ライター:河野 哲弥
模擬レースなどを中心に約3時間の練習
子供たちを見送っていたら、阪田さんから「現場へ行ってみませんか」とのお誘いを受けた。
その日参加している生徒は7人。彼らを、コーチなどが3艇のゴムボートに乗ってバックアップする。そのうちの1艇に同乗させてもらった。
追い風の時には、風を受けて進むヨットだが
向かい風の時にも進むのは、なぜなのだろうか
今まで「ヨット」と表記してきたが、このクラスの船は、正式には「ディンギー」というらしい。
それにしても、一定方向の風が吹く中で、どうやってあらゆる方向へ動けるのだろう。
分かりやすいのは、自分の後ろから吹く追い風である。このときは、風に垂直になるように帆を張ればいい。水から受ける抵抗を少なくするために、わざと傾けるような形でバランスを取るのがコツだ。
上級者の様子、転覆しかかっているのではない
気をつけたいのは、自分の後ろに他の艇がいると、全ての風を奪われてしまうこと。しかしその艇に追い抜かれると、立場はとたんに逆転する。
追い風の場面の見どころは、こうした駆け引きにあるといっていい。
一方、向かい風の場合はどうするのだろう。
阪田さんによれば、飛行機の原理と同じようなものだと言う。艇は、帆を膨らませている方向に引っ張られる性質がある。飛行機の翼なら、膨らんでいる上方向に機体が持ち上げられ、飛ぶことができるのである。
常に風の方向を確認する、志保ちゃん
「ディンギー」のようなヨットの場合、志保ちゃんの写真の状態なら、右方向に引っ張られるはずである。この動きを、「センター」と呼ばれる船体中央底面に設けられたフィンと、自分で操るラダーによって制御する。
それでも、多少右に引きずられるため、ときどき「タック」と呼ばれる方向転換をする必要がある。
つまりヨットは向かい風に対しては、常にジグザグの動きをすることになるのだ。
この日の模擬レースは、合計4回行われた
他人の後塵を拝しているだけでは、絶対に勝つことのできないこのヨットレース。どうやらその目的は、誰も助けてくれないひとりだけの状況で、環境を味方にしながら困難を克服する、体験学習の場であるようだ。
2011年、最後の練習を終えて
いつもならこれで解散するのだが、その日は今年最後の練習だった。
そこで、一年間の表彰を兼ねたクリスマス会を開催することになった。この日ばかりはご両親も参加し、各自2品の手料理やプレゼントを持参していた。
ずらっと並ぶ手作り料理の数々
中には、ヨット型のクッキーも
クリスマス会の準備が行われている間、阪田さんに、同ヨットクラブの歴史を聞いてみた。
すると、設立されたのは1991年とのこと。当初は、子どもの数もわずか4人程度だったそうだ。
しかし、最盛期には28艇の「ディンギー」が鶴見川を往復し、国内チャンピオンを創出したほどの実力を持つ。
文部大臣賞を受賞したり、ヨーロッパ選手権などにも選手を送り込んでいる。
また、この20年間で事故は「ゼロ」。それが何よりの誇りと話してくれた。
マリーナをバックにした、代表の阪田さん
表彰式に向けて用意されたトロフィーなど
阪田さんによれば、日本にはマリンレジャーの文化が、まだまだ定着していないという。
現在、ヨット関連の競技人口は国内で約1,000人。そのうち選手として登録されているのは、300人足らずであるらしい。しかし裾野が狭い分、来年夏に開催されるロンドンオリンピックに、同ヨットクラブの卒業生が出場する可能性は高いと話す。
志保ちゃんも、堂々Bクラスの入賞を果たした
人の育成に力を入れる同ヨットクラブの存在。それは、以前同行した、瀬谷区のボーイスカウト隊に通じるところがあると感じた。
そこに共通するのは、技術の取得を通して自律した大人を育てるというもの。
これからの日本に明るい話題をもたらすのは、こうした次世代なのかもしれない。
なお同ヨットクラブでは、小学2年生以上中学3年生までを対象として、随時入会を受け付け中。
ヨットマンを目指さなくとも、シーマンシップを身につけさせる意味で、体験させてみてはいかがだろうか。
―終わり―