「アンパンマンお面をかぶった誘拐犯」は横浜に実在する? 本物の探偵と追跡
ココがキニナル!
アンパンマンのお面を被った不審者が子供を連れ去ろうとする事案があり、学校等でも注意するようにと通達がありました。被害届が出ていないらしく、デマか本当か気になっています(@kiraさん/とろみさん)
はまれぽ調査結果!
「子どもを守りたい」という善意によって、噂に尾ひれがついて拡散してしまった情報の可能性が濃厚。探偵の調査では、「鴨居駅周辺の中学生」が出どころという見方も
ライター:はまれぽ編集部
「事件現場」はどこ?
SNS上の注意喚起情報を整理すると、
・アンパンマンやメロンパンナちゃんのお面をかぶった二人組の不審者が出没
・子どもが車に乗せられそうになった
・お面は日替わりで違うキャラクターに付け替えている
といった犯人像が語られている。さらに、被害に遭いそうになった子どもの通う小学校名や、犯人が出没した場所、二人組の乗る車の車種やナンバーなどの情報が飛び交い、「一人で登下校しないように」「子どもが怖がっている」などのやりとりとともに広まったようだ。
6月初旬に急速に話題になった不審者情報だが、7月以降は沈静化。問題はなくなったのだろうか?
保土ケ谷区の閑静な住宅街。記録的な猛暑のためか人の気配はあまりない
主に拡散されているのは緑区や保土ケ谷区、神奈川区周辺の地名。地域の小学校や公園などを巡り、不審者の情報を探す。
不審者情報として広まったものの中には「羽沢の洋菓子店近くのパンダ公園で、アンパンマンとメロンパンナのお面を被った二人組に子どもが腕をつかまれ、車に連れ込まれそうになった」というものがある。
同様に、「家電量販店付近」「緑車庫付近」「鴨居駅付近」「〇〇小学校付近」などの場所も未遂現場とされており、「広い範囲に出没情報があるので注意してください」という内容だ。
情報の中で頻出していた羽沢の洋菓子店周辺の様子を見てみる。
お店の所在は確認
同店のすぐ裏手には小さな公園があるが、パンダの名前や遊具は見当たらない。
いたのは亀だけ
だが、近隣で働く女性のお話によると、近所の方の間ではこの公園が「パンダ公園」と呼ばれており、「犯行場所」とされた公園に間違いないようだ。
一方で、「ここで事件があったというのはデマです。地元の警察署への報告が一切ないことを地元住民が確認しました」と証言する。
この場所での事案は事実無根と考えて良さそうだ。
公園での事件は風評だった
さらに女性は、「けれど、緑区で起きた不審者情報は本当らしいです。場所はちょっと覚えてないですが・・・」とも話してくださった。
吉田氏は「緑区の家電量販店付近などでの不審者の目撃情報は本当にあり、警察への通報前に保護者間で拡散した、という事情があるのかもしれません」という見方だ。
不審者は車を所持しているという話があったためか、「出没場所」の情報も、後発になるほど広範囲に渡っている。
近隣の保護者層を中心に「うちの近所も危ないかも・・・」という思いを抱かせたのだろう。
相鉄線西谷駅周辺も、不審人物の出没先として注意喚起されていた
聞き込みの中では、SNSで拡散されていない情報も得ることができた。
6月の初めには小学校で不審者情報が出回っていたが、幼稚園・保育園などでは噂になっていなかったという。そうなると、情報は小学校の児童や保護者を中心に広まっていったようだ。
被害にあった子どもが通っていたとされる小学校の一つ
ある保護者は「お面の二人組のうち、アンパンマンは捕まったけど、メロンパンナちゃんは捕まっていないと子どもから聞きました」と話す。実際には不審者の逮捕などは確認されていないため、子どもたちの中でも噂が独り歩きしていったことが分かる。
地域の公園。このエリアは子どもが遊べる場所が多い
小学校から注意の呼びかけがあったという情報がある一方、地域の高齢の方からは「不審者の情報は聞いたことがない」という話も得られた。学校に子どもを通わせる親世代の間で、情報は広まったようだ。
地域の人たちはよくあいさつを交わしており、不審な車などがいればすぐに噂になりそう
保護者同士のメールのやり取りやLINEなどでも不審者情報が交わされており、それがTwitterに転載されたり、逆にほかのSNSの情報を元に周囲に広めたりしながら、情報が追加・変化していった経緯があると見られる。
実際に地域の小学校に通う児童たちの間では、6月上旬に不審者の話が頻繁に話題に上がり、「怖いね」「何かあったらダッシュで逃げよう」などの会話を交わすこともあったらしい。
一方で、7月以降はそうした話題も上がらなくなり、不審者に関する噂はすっかりなりをひそめているとのことだ。
情報の出どころは?
探偵の調査結果を総合すると、情報の出どころは悪意あるデマではなく、実際の未遂事件や目撃情報をもとに子どもたちの中で広まった噂話に徐々に尾ひれがつき、それが保護者を通じて拡散したものと思われるようだ。
吉田氏は「発生源は緑区のJR鴨居駅付近の中学生ではないかと思われる情報もありました。おそらく小学生、または中学生間で交わされた不審者や怪しい人物の情報が伝言ゲーム的に広がり、6月1日に保護者に到達して拡散したものではないでしょうか」と見る。
駅周辺からさまざまな場所に情報が広がった?
噂の元になった情報として「小学校1年生の子どもが車に連れ込まれそうになったが無事だった」という「連れ去り未遂事案」も存在しており、こちらには「お面の不審者」は登場しない。「この事案の真偽も不明ですが、発生源となった可能性は高いです」と吉田氏。
急速に広まった不審者情報はほとんどが伝聞で目撃情報は一切ない。どこかで付け加えられた「アンパンマンのお面」のインパクトの強さが、情報拡散の決め手になったようだ。
取材を終えて
実際に噂の発信源に近いエリアを調査していると、住民同士が積極的に挨拶を交わして連帯感が強く、地域ぐるみで子どもを大切にしようとしている雰囲気を感じた。
そうした環境も、危機感をあおる情報が拡散しやすい要因ではあっただろう。
小さな横断歩道にも、子ども用の旗が用意されている
一方で、こうしたデマや事実に基づかない情報が拡散することで、本当の危機が起きた時に「また嘘かもしれない」「信じられる情報なのか」と考えてしまい、行動を鈍らせる前例になりかねない。
不審者に注意・警戒するのはとても大切なこと。その上で、パニックになることなく、情報の真偽をしっかりと見極める必要がありそうだ。
ー終わりー
取材協力
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三日坊主さん
2018年07月24日 12時13分
口裂け女を思いだしました。
ネット社会では良くも悪くも情報が広がりやすいので注意が必要です。
ナチュラルマンさん
2018年07月24日 00時30分
これは新しい都市伝説かなあ?マントを纏った男が子供を誘拐するとか、お面を被った人に誘拐されるなんて噂は30年前以上からあった。まさかアンパンマン?やなせたかしさんはあの世で悲しんでいるだろうなあ…
ぴっぴさん
2018年07月23日 11時31分
この噂の真偽がずっと気になってたので、調査してもらって良かったです。ありがとうございます。この噂の真偽がどうであれ、他の不審者情報も結構多いので、どちらにしても気をつけなければなりませんね。