横須賀市内に「限界集落」があるって本当?
ココがキニナル!
横須賀には200段の階段を登ったところに住宅が多数あり、限界集落になっているようです。限界集落の状況や、住んでいる人の暮らし?宅配便は届くか?また「空き家バンク」の現状を調査願います。(まさしさん)
はまれぽ調査結果!
車が入れず階段でしか行けない、交通の不便な谷戸の家を中心に空き家が増えている。横須賀市では空き家を減らす対策を行っていて変化が生まれている
ライター:小方 サダオ
汐入5丁目の住人に話を伺う
汐入5丁目に戻ると、再び安部さんにお会いした時の階段を上った。
中腹にはゴミ集積所とベンチが設置されている
山の中腹の道から、何本もの階段が山の上へと伸びている。
その1本の階段を上ると、1軒目の階段の左側は空き家になっていて、さらに上がった右側の2軒目は子どもたちの声が聞こえるにぎやかな家であった。
階段の先には・・・
空き家と思われる家がある場合が多い
挨拶をすると、若いお母さんが出てきてくれた。
この谷戸での生活に関して伺うと「2014(平成26)年の4月から住み始めました。ここに住んで不便で大変なこともありますが、代わりの良さがあります。それは静かで自然が豊かなことや、ご近所との付き合いが楽しいことです。娘が裏道を通って簡単に『隣の親戚の家に行く』感覚でよく遊びに行きます」と答えてくれた。
そこでガーデニングが素晴らしい、という隣のお宅にお邪魔すると、Cさん夫人が、庭について説明をしてくれた。
Cさん夫人と隣人の母子
春にはモッコウバラが咲き誇るという
「ガーデニングを始めて9年目になります。自慢の花は、モッコウバラやヤマブキですね」
「私たちはここに住んで何十年にもなります。車が入ってこないので、静かで、自然が好きな人には良い環境ですよ。また町内会で声を掛け合う習慣があります」
手作りの縁側
空き家の住人などに関して伺うと「隣の住人はお年寄りでした。25年くらい前から空き家になり、放置されているので雑草が生い茂っています。階段が大変なので足が悪くなるとふもとに移られる人が多いです」
「また30年ほど前に、上の家と下の家の2軒ほどが火事になったことがあり、近所の家の人たちが水道の水を出しっぱなしにしたりして、延焼を防ぐ対処をしたりしました。消防車はふもとまで来れますが、近くの消火栓まで隊員が山を登ってきて消火活動をしなければならなかったので、手間取っていました」と答えてくれた。
山の中腹にある消火栓
ご主人の通勤などに関して伺うと「長い間東京まで通勤していました。横須賀にも企業がたくさんあれば通勤の手間はなくて谷戸に住む人も増えると思います」と答えてくれた。
前出の市内の労働力の低下も空き家の増加に影響しているのかもしれない。
階段を上ってきたある若者に谷戸について聞くと階段が多いことで弱気な返答が・・・
乗ったままは危険だが、オートバイを押しての上り下りは大変なことだろう
さらに道を奥へと進むと、海が見えてきた。
山からの港の風景が横浜の山手に似ていなくもないが、自然が多いことと、港に停泊しているのが軍艦であることが大きく違う。
港に停泊する軍艦
潜水艦の姿も見える
さらにまたひとつの階段を上り、頂上付近に家を構える女性に話を伺うと「4年前から住み始めました。気に入ったのはこの海の見える風景です」
「この先の家には、以前はお年寄りが住んでいましたが、体調が悪く酸素ボンベを引きながら、杖を突いてこの前の道を歩いていて、大変そうでした。息子の世話になるとのことで出て行かれました」と答えてくれた。
しかしその不便な場所にも、代わりの入居者が入っている、という。
草木が茂る、空き家と思われる家
細い尾根伝いの道
その道の突き当りは山が迫っている印象だ
ある階段を上ると、細い尾根伝いの道になりその先は草木が生い茂っていて行き止まりになっていた。しかしそんな場所にも空き家があった。まさに自然と一体化したような生活環境であったのではないだろうか。
標高が高い場所ほど空き家が多いようだ
けもの道に近くなる
その先にも空き家があった
コンクリート製の丈夫そうな塀
頂上付近の散策を終え中腹へと戻ると、夕暮れ時になっていた。
ふもとにはマンションが林立する
するとそこに地元の方と思しき男性が、散歩をしているのだろうか、身軽な格好で現れた。
NPO法人に属し民間として横須賀市の空き家問題に取り組んでいるIさんという人であった。
海上自衛隊の護衛艦の甲板が見られる場所は珍しいという
まずはこの場所と空家について話を伺った。
「私は5年前から横須賀に住み始めました。この谷戸には江戸と浦賀を結んでいた"うらが道"が通っていて、歴史がある場所なのです」
歴史的な"うらが道"
「駅からのアクセスは良く、港が見下ろせる静かなエリアですし、私からすると、こんな隠れた良い場所は人には教えたくない気持ちです」と答えてくれた。
ここで空き家バンクで入居したある家まで案内してくれた。
「岐阜県に本社のあるアプリ制作会社のサテライトオフィスです。関東圏に営業をするのにアクセスの良い立地にあり、10万円以下というこの家賃の安さは魅力的ですよ」と答えてくれた。
あるIT企業のサテライトオフィスを案内してくれるIさん
またある宗教団体が所有している土地があり「こんな場所に建物が建つか疑問ですね」とIさんは答えた。
家賃の安さにつられてなのだろうか、これからさまざまな人たちがこの谷戸に集まってくるのかもしれない。
ある宗教団体が所有する土地
谷戸には介護サービスをする場所もある
ここでIさんのお宅にお邪魔することにした。
30数畳もある平屋建てで、家賃も安い
ご自宅やこの街について、あらためて話を伺うことにした。
「この物件は、平屋建てで、30数畳で50平方メートルもあるにもかかわらず、4万5千円という安さです」
「昔の造船時代の仲間意識が受け継がれている習慣なのか、道行く人に挨拶をしてくれる気持ちのつながりの強い街なのです。ここ20年間で、空き巣が1件あっただけという犯罪率の低さです」と答えてくれた。
空き家バンクで入居した学生について話すと「あのプロジェクトで入った学生は、町内会の活動に参加すると家賃を安くしてもらえるなどの特典があるようですよ」と答えてくれた。
広い庭があり、バーベキューなどがやりやすいという
今後の空き家対策に関しては「市内にはホテル以外の宿泊施設が少ないので、空き家を宿泊施設にしたりするのは良い考えだと思います。ジャズなどで知られる横須賀の雰囲気として、アーティスト・文化人が移り住むのに良い場所だと思います」
「以前13人ほどの有志で、この谷戸を良くするために集まり、散策をしました。その中の1人に、以前ここに住んでいて懐かしくなって参加した、という人がいました。港の見えるこの風景は住人の印象に強く残るのでしょう」と答えてくれた。
帰り際、今度は汐入駅の一つ手前の京急線逸見(へみ)駅から電車で帰りたいと思い、Iさんに道を聞き、お別れをした。
逸見駅へと下りる階段
逸見駅
山の中腹から逸見駅までは、徒歩10分程度という近さであった。
やはり問題となるのは階段なのかもしれない。
取材を終えて
ふもとに戻ってみると、自然の風景に魅かれて山の上に住んでいる人たちに、のんびりとした遊び心のある別世界の住人と言った印象を持った。
そんな生き方と波長の合う人たちが集まり、横須賀をさらに活気づけられれば、空き家のみならずさまざまな問題の解消につながるかもしれない。
山の上は別世界の印象がした
―終わり―
横須賀港の創設150周年に関するイベント
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/0130/seitetsuzyo/events.html
汐入・逸見丘陵地区情報交換会
https://www.facebook.com/events/455050257996105/
「うらが道ウォーク」
https://www.facebook.com/events/1619479564950751/
ヨコスカテラス
https://www.facebook.com/yokosukaterrace
みなと広告さん
2016年01月18日 16時20分
横須賀は仕事で行くのですが、確かに凄い、特に浦賀駅から観音崎にかけてなどもそうだし、秋谷や武といった西海岸エリアも凄いです。汐入近辺より切実かもしれません。
寝台内では禁煙さん
2015年09月23日 22時29分
切実な問題かと思いますが、この時代に地域の助けになる若者の姿が素敵に感じた。
はまっこ61号さん
2015年09月20日 13時22分
駅至近、眺望よし、自然があふれる静かな住宅地、といってもこの階段につぐ階段はきびしい。若い人でも病気になったときやケガしたとき、火事や警察沙汰がおきたときのことを考えると不安ですね。自衛隊や米軍の艦船を見下ろせるからミリタリーマニアな人は楽しいかもしれないな。