今回は「開店10年以上の家系ラーメン・プチ老舗店の店長が次に目指すラーメンとは?」をテーマに、西区平沼の「ありがた家」と中区末吉町の「晴れる家」をご紹介。
「ありがた家」のルーツと味について
相鉄本線平沼橋駅、横浜市営地下鉄ブルーライン高島町駅より徒歩5分ほど。「平沼一丁目」交差点付近に店舗を構えるのが「ありがた家」。
オープンしたのは2003(平成15)年10月。この地で10年以上に渡って営業を続ける“プチ老舗店”だ。

「ありがた家」に到着

席数はカウンター14席

メニューはラーメンのほか定番のトッピングがラインアップ

おすすめメニューは「お好きなラーメン+ネギめし」
お伺いしたのは午後2時30分を過ぎにもかかわらず、カウンターはほぼ満席。お客さんの邪魔にならないよう、お店の裏側に通していただき、さっそくお話をお聞きする。店長のお名前は木村豊(きむら・ゆたか)さん。修行先をお聞きすると「特に修行はしていない」とのこと。
それでは、お店を開店するまでは何をしていたのかと尋ねると、「実は兄と一緒に東京の戸越銀座で『木村家』という家系ラーメン店を営んでいました」と木村さん。
「もともと住宅関係の営業職をしていたのですが、大阪の実家が飲食店を経営していたこともあって、いつかは自分もお店を持ちたいと思っていたんです」と話す。

店長の木村さん
「兄が数ヶ月間だけ某家系ラーメン店で働いたことがあったので、『何とかなるかな?』と思い2人でお店を始めてしまいました」。・・・すごい勇気だと言わざるを得ないが、お店はうまくいったのだろうか?
「うまくいくわけないじゃないですか(笑)。でも、死に物狂いで勉強しました。そんな時、日吉の『らすた』さんで食べたラーメンがとても美味しくて、特に麺に感激して・・・調べてみると川崎の『染谷製麺』さんの麺であることが分かりました」
「すぐに連絡して『使わせてくれ』とお願いしたのですが、にべもなく断られました。それでも粘ってお店に来てもらい実際にラーメンを食べてもらったのですが『まずい』と言われてしまって・・・。『絶対に美味しいラーメンを作りますから!』って何度も何度も交渉してようやく使えることになりました」とのこと。これぞガチンコ交渉である。

染谷製麺(特注品)の麺
「だから私はまず『麺ありき』で味を作ってきたんです。染谷製麺の麺は、もちもちとしていてとても美味しい麺です。その麺をベースとして、味を決めてきました」と木村さん。
「結局『木村家』はたたんでしまったんですけど、味は『ありがた家』に引き継がれています」とのことだった。
「木村家」の閉店後、別のオーナーの出資のもと木村さんが“店長”として一から立ち上げたのが「ありがた家」だ。ここでも染谷製麺の麺をベースとし、厳選した素材で作り上げたスープと、選び抜いた徳島産のしょうゆを使いこだわりの一杯を作り続けている。
ふと、壁に目をやるとこのような表記が目に入った。

店内には、油「無し」の表記が!
「油(鶏油・ちーゆ)が入っていないラーメンは、個人的には家系ラーメンではないと思っていますが、お客さんからの要望もあって選択可能にしています。でも、初めて来店したお客さんがコールした時は、少しだけでも入れてもらうようにお願いしているんですよ」とのこと。
客層は成人男性をはじめ小さな子どもや女性客も多いとのことで、多様なお客さんへの木村さんの配慮が伺える。
実食レポート
実食するのは前回の記事と同じ面々。今回は「味玉ラーメン(800円)」をお願いした。あわせて、お店のオススメということで「ねぎめし(200円)」も用意していただくことに。

オーダーを受けてから作り始める

厨房内にたちこめる湯気

寸胴をかき混ぜ・・・

そしてスープをドンブリに投入

麺をかき混ぜて・・・

着丼

味玉ラーメン

ねぎめし

それではいただきます!
編・大日方:スープはマイルドでバランスがとてもとれていると思いました。麺はもちもちで、のど越しもやさしい感じです。
マーコ氏:うーん。言わば“オールド家系”を感じさせる味ですよね。濃厚過ぎないスープに程よいしょうゆ感と鶏油感が三位一体のテイストを作り出しています。家系の原点でありお手本のような、今となっては何か懐かしさを感じさせてくれる一杯だと感じました。あと、この味玉は人生トップ3に入るダントツの出来栄えです。

これが染谷製麺の麺です
編・広瀬:若干とろみがあるのかな? と思うようなスープは、甘さと優しい口当たりが印象的です。麺はもちもち! 臭みがなくほろっと崩れるチャーシューがすごくおいしい。
あと「ねぎめし」は、タレがさっぱりしていて、ラーメンの中では主張が強いともいえる「家系ラーメン」とあわせても食べ疲れというか、重たさがなくサクサク食べすすめられます!

「ねぎめし」はさっぱりと頂けます
編・大日方:ネギがたっぷりと載っているのがいいですよね。 見た目もとても鮮やかだし。ラーメンの海苔に巻いて食べても、とても美味しかったです。
マーコ氏:味付けされたライスのため、絶対に海苔巻きライスに合わないと予想していましたが、良い意味で裏切られました。海苔巻きライスの新たな可能性に気づかせてくれた家系メシだと思います。
実食を終え、店長に今後の夢について伺うと、「『ありがた家』のラーメンは自分が10年以上かけて磨き上げてきた味です。今後もブレずに精進していきたいと思います」とのことだった。
・鶏油(チーユ)の量 ★★★
・しょうゆ感 ★★★
・豚骨感 ★★★
・麺 染谷製麺(特注品)
(★=5つが最大)
・ライス 100円
まだ作ってみたいラーメンがある「晴れる家」≫
まだ作ってみたいラーメンがある「晴れる家」
京急本線黄金町駅、横浜市営地下鉄ブルーライン阪東橋駅から徒歩4分ほど。大通りからちょっと入った場所に店舗を構えるのが「晴れる家」だ。オープンしたのは2016(平成28)年6月30日。

「晴れる家」に到着

席数はカウンター11席

写真入りでメニューを紹介している

「晴れる家」の特徴は多彩なメニュー
「晴れる家」は、前出の木村さん念願のオーナー店だ。
「ずっと店を自分で持ちたいと思い続けてきました。『木村家』の件もありましたしね。その次に働いた店でも、一所懸命『家系ラーメン』を追及してきたと思います。でも、まだ自分には作ってみたいラーメンがある。それはもしかしたら、もはや『家系ラーメン』ではないのかもしれませんが、自分の店で新しいチャレンジをしてみたかったんです」と木村さん。

“自分の店”の厨房に立つ木村さんからお話を伺う
「開店の2~3年前から、関内・黄金町・阪東橋あたりで物件を探していました。このあたりは人も多いし、ライバル店も少ないと思ったので、いいラーメンを作れば勝負できると思ったんです」と、この場所を選んだ経緯を語ってくれた。

「晴れる家」のコンセプトについてお話を聞くマーコ氏
「まだ自分には作ってみたいラーメンがある」という木村さんの言葉どおり、ラーメンのメニューには、ラーメン(700円)のほか、黒マー油ラーメン(750円)、みそラーメン(850円)がラインアップ。トッピングのキャベツ(100円)や、ねぎ(150円)も特徴的だ。そして、さらなる新メニューも構想中とのこと。
「晴れる家」のラーメンは、これまで追求してきた味を踏襲しつつも、更に材料を吟味してスープを作り出している。そして麺は、もちろん染谷製麺の麺(特注品)だ。
黒マー油ラーメンは、鶏油とマー油をブレンドしたラーメン。もともとは、まかないとして作り出し、その後も研究を続けてきたメニュー。
みそラーメンは、おいしいと思うみその組み合わせを何通りも試し、今は4種類のみそをブレンドして提供しているとのことだった。
実食レポート
「ラーメン(700円)」と、非常にキニナル存在の「黒マー油ラーメン(750円)+味玉(100円)」をいただくことにした。

タレをどんぶりに

麺をゆで・・・

スープをどんぶりに注ぎ込む

息ぴったりのオペレーション

ラーメンが着丼

黒マー油ラーメン+味玉も完成

それではいただきます!
編・大日方:ラーメンは、とても上品なスープですね。しょうゆの味は強めに感じます。
マーコ氏:スープがライトな分、カエシであるしょうゆ感が強いですね。でも、この「しょっぱさ」が良い意味で、ある意味「クセになる」味を作り出していると思います。

「クセになる」味です
編・広瀬:おいしいですね! 甘みが抑えめですっきりした印象です。そのためか、味が濃いというか塩気を少し強めに感じました。麺はもちろん、もちもちしててスープと良く合っています。
あと、黒マー油ラーメンは、ニンニクの香ばしいかおりが食べる前から感じられます。
編・大日方:うん。黒マー油ラーメンは、食べていて「熊本ラーメン」を思い出しました。でも麺が特徴的なので、別モノになっているんですけどね。斬新ですねこれは。

麺はもちろんもちもち
マーコ氏:どちらのラーメンも、ほかの家系のお店ではほとんどお目にかかれない、染谷製麺の麺がキモになっています。今度、みそラーメンも食べてみたいですね。
実食を終え、木村さんに今後の夢について伺うと、「『晴れる家』はまだまだこれからの店です。しっかりと経営し、宣伝などもしていきたいと思っています。いつか多店舗展開ができるようになったら、駐車場付きの郊外店をやってみたいですね」とのことだった。

木村店主と店長をパチリ
・鶏油(チーユ)の量 ★★★
・しょうゆ感 ★★★
・豚骨感 ★★
・麺 染谷製麺(特注品)
・ライス 100円
(★=5つが最大)
取材を終えて
一人の職人のもと「屋号が変わっても味は続いていく」ということを感じた取材だった。これが進化(深化)するということなのかもしれない。次回は、「クリソツな両店の関係」を掲載する予定だ。
―終わり―